IR法案成立で、カジノが合法化される見通しとなった日本。
国内にあるさまざまなギャンブルの中で、カジノと比較されることが多いのがパチンコです。
とくにスロットとパチンコには共通点が多いため、「どこに違いがあるのかわからない」という人も多いのではないでしょうか。
この記事では、カジノとパチンコの違いについて、合法性やゲーム性など、たくさんの要素から比較して解説していきます。
統合型リゾートの開業によってパチンコ店が受ける影響など、業界の未来についても予測しましょう。
カジノは現時点で違法、パチンコは合法

現時点でのカジノとパチンコの決定的な違いは、違法性です。
現在日本で開かれているカジノは「闇カジノ」であり、これに参加すると、賭博罪に問われる可能性があります。
一方のパチンコは合法的に営業が行われているため、全国どのパチンコ店を利用したとしても、罪に問われることはありません。
パチンコはなぜ合法なのか
パチンコは、ゲームに勝つと玉が出て、それを換金できるというシステムです。
公営ギャンブルではないにもかかわらず、なぜこれが合法と見なされるのでしょうか。
その答えは、「三店方式」にあります。
金などの特殊景品をパチンコ店から受け取り、それを換金所で売却するという仕組みにより、合法化されているのです。
三店方式については、現在も議論の対象になることが多く、「カジノが違法なのにパチンコが賭博にならないのはなぜか」という声も聞かれます。
「パチンコ利権」という言葉もあるように、「政府や警察との癒着があるのではないか」という指摘も少なくありません。
IR推進法によりカジノも合法化へ
2016年12月にIR推進法が成立し、統合型リゾートの運営を国が推進することが決まりました。
これにより、認可されたカジノで行うゲームは、すべて合法になります。
ただし、カジノ開業後も、認可された施設外で行うカジノは「賭博」として扱われることに変わりはありません。
カジノとパチンコにはゲーム性の違いが多い

カジノの人気ゲームのひとつに、スロットがあります。
これはパチンコ店にあるゲームと見た目やシステムがよく似ていますが、実は、ゲーム性やギャンブル性に大きな違いがあります。
具体的にどんな部分が違うのか、4つのポイントで比較してみましょう。
カジノは当選確率の設定ができない
パチンコ店に置かれているパチスロは、当選確率の操作を、お店側ができるようになっています。
6段階から任意で設定することが可能であり、当たりやすい台やお店を探すことも、醍醐味のひとつです。
それに対してカジノのスロットは、当選確率をお店が設定することはできません。
ギャンブル性という点では若干薄れますが、より公平に当選するチャンスが与えられることが、カジノの特徴です。
カジノにはジャックポットがある
カジノスロットの魅力といえば、「ジャックポット」です。
1万円程度の投資で数十億円を引き当てた人も実在するなど、一獲千金を狙うためには、見過ごせないゲームです。
日本でもカジノから億万長者が生まれる日がくるのは、時間の問題といえます。
一方のパチンコには、ジャックポットがありません。
1日で数十万円をゲットしたというツワモノは生まれますが、数時間で人生を変えられるほどの勝利金を手にすることは、システム上どうしても不可能です。
一獲千金を狙うなら、カジノのほうが、圧倒的に確率が高いといえるでしょう。
カジノは手数料が発生しない
パチンコには交換手数料があり、景品に交換する際に、一定の料金が差し引かれます。
つまり、1,000円で購入した玉・メダルを換金する際には、1,000円以下の価値にまで下がることになるのです。
カジノでは、そういった手数料を差し引かれずに勝利金を受け取ることができます。
日本人が日本国内のカジノを利用する際は6,000円の入場料がかかりますが、その代わりに余計なお金をとられることはないのです。
共通する課題はギャンブル依存の問題
カジノとパチンコに共通する課題は、ギャンブル依存症の問題です。
新型コロナによる緊急事態宣言中には、東京や大阪でパチンコ店の営業自粛が求められましたが、それに反して営業を続けるお店には、ファンが殺到しました。
こうした事態を踏まえると、ギャンブル依存症対策は、必須と考えられます。
政府ではすでに、「ギャンブル依存症対策基本法」を成立させました。
IR推進法に合わせて作られた法律ですが、この「ギャンブル」の中には、パチンコも含まれています。
ギャンブル依存症の予防や治療に国や自治体が全力をあげることにより、改善を目指すことになるでしょう。
日本には、生活保護を受けながらパチンコなどのギャンブルに興じる人が一定数存在するといわれています。
依存症問題は、カジノ推進派でさえ懸念する問題であり、カジノには「1週間で3回まで」といった入場規制が設けられることがすでに決まりました。
どこまで対策がとれるかは、今後、もっとも大きな課題となるでしょう。
カジノとパチンコは場内の雰囲気が違う
カジノとパチンコの違いを語る上では、場内の雰囲気という点にも言及する必要があるでしょう。
ギャンブル場であることは同じでも、双方の雰囲気には、対極といってよいほどの違いがあります。
どちらが自分の好みに合っているのかを判断することもオススメです。
ラグジュアリーさを売りにするカジノ
カジノの売りは、ラグジュアリーさです。
カジノでたくさんのお金を使う人は「ハイローラー」と呼ばれ、売り上げに貢献する人は、専用のVIPルームに通されることもあります。
海外ではドレスコードが設定されているカジノも多く、「大人の社交場」としても機能しているのです。
日本に誕生するカジノも、統合型リゾート施設のひとつであることから、高級志向になることが予想されます。
カジノに併設されるホテルやレストランは、いずれも一流である可能性が高く、セレブも満足するような非日常の空間になるのではないでしょうか。
より大衆的な雰囲気を楽しめるパチンコ
パチンコはカジノと比べて、より大衆的な雰囲気を楽しめることが魅力です。
営業時間内であればドレスコードもなく自由に入店できるので、休日にふらっと立ち寄りやすいこともメリット。
タバコを吸うことも認められている場合が多く、のびのび過ごしたい人に向いています。
入場料がかからないことも、カジノとの違いになります。
賑やかな場所なので、友人や恋人と大きな声で話していても、マナー違反にはあたりません。
また、タレントやアニメキャラクターを採用した機種が多く取り入れられるなど、エンターテインメント性の高いゲームを楽しむこともできます。
カジノ開業でパチンコ業界が受ける影響とは
カジノ開業により、「パチンコに通う人が少なくなるのではないか」というあがることもあります。
もしもパチンコ客が一斉にカジノへ流れてしまうと、パチンコ業界が、現在の勢力を維持し続けることは難しくなってしまうでしょう。
カジノ誕生後に、パチンコ業界が受ける影響について考えてみます。
パチンコ業界には衰退の傾向がある
実はすでにパチンコ業界には、衰退の傾向が見られます。
2017年3月から2018年3月までの統計を見てみると、パチンコの営業店舗数は9,915店から1年間で9,530件にまで減少。
2018年3月には、新規開店数が4店舗であることに対して、廃業店舗数は69店舗にまで上っています。
原因として考えられるのは、地方経済の悪化と少子高齢化です。
地方都市では人口の減少が相次いでおり、パチンコを利用する客そのものが大幅に減少しています。
資本的な体力のある大型店の進出も足かせとなり、個人経営のパチンコ店が経営難に追い込まれるケースもあります。
この状況に加えて、IR推進法が成立したという事実は、パチンコ業界に大きなダメージをもたらす可能性もあるでしょう。
コロナ蔓延中に行政の方針に反し、世間からの反感を買ってでも営業を続けたお店が多い理由には、すでに起きている業界全体の財政状況の悪化も影響していると考えられます。
パチンコファンが離れる可能性は低い
一方で、パチンコは根強いファンを抱えています。
コロナ禍では、わざわざ県をまたいで営業中のパチンコ店に向かう人が続出するなど、パチンコの射幸性に魅力を感じる人は、現在も非常に多いのです。
固定ファンは、今後もパチンコの売り上げに貢献し続ける可能性が非常に高いでしょう。
現実問題として、今回のIR推進法によって誕生するカジノは、3箇所に限られます。
外国人観光客をメインターゲットにするため、空港から近い都市部など外国人が利用しやすい候補地が有力にもなっており、地方都市の娯楽として、パチンコは確実に生き残ることになるはずです。
カジノには入場料がかかるほか、入場制限もギャンブル依存症対策として設けられます。
パチンコには数十年という長い歴史があるため、日本人になじみやすく、カジノのように新しくルールを覚える必要もありません。
カジノの誕生により、店舗数が激減するというリスクは低いのではないでしょうか。
気がかりなポイントとなるのは「換金禁止」実現の有無
気になるのは、「換金禁止」が実現されるかどうかです。
パチンコ業界には多くの利権があるとされ、三店方式により、警察からの立件を免れてきました。
しかし、IR推進法により、日本政府がカジノへの注目度を高めようとする意図をもった場合、規制が強化される可能性はあります。
ギャンブル依存症対策法案では「パチンコ機等の射幸性の抑制」といった提案も盛り込まれており、活発な議論を巻き起こしました。
仮に換金が禁止されることになれば、パチンコの魅力は失われることになり、急激な衰退を招くことになるでしょう。
まとめ
カジノとパチンコにはさまざまな違いがありますが、ゲーム性という面では、ジャックポットの有無や当選確率変動の可否が、とくに大きな違いといえるでしょう。
場内の雰囲気もまったく異なり、ラグジュアリーな路線のカジノに対して、パチンコの売りは、庶民的な空間作りです。
換金禁止が実現した場合にはその可能性が大きくなりますが、現段階では、ギャンブル依存症対策基本法がどのように作用するかは不透明です。
パチンコとカジノは、似ている部分も多いとはいえ、それぞれ違った魅力をもっています。
現段階では、パチンコとカジノは、共存できるギャンブルと考えて問題はないでしょう。
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