IR推進法が成立して以降、人々の興味は、「日本にカジノが誕生するのか」から、「日本のどこにカジノができるのか」に移っています。
これまでに9つの自治体が誘致レースに本格参戦、あるいは誘致に強い興味を示してきましたが、具体的にどんな地域なのか知らないという人も多いかもしれません。
今回は、日本のカジノ候補地についておさらいし、とくに有力な候補地はどこなのか、詳しくご紹介します。
また、気になる「候補地の正式決定はいつなのか」という疑問にもお答えし、日本国内でカジノが解禁される時期についても予想します。
目次
カジノ候補地として有力だったのは9つの都道府県

これまでにカジノ候補地として誘致レースに参戦、あるいは強い興味を示してきた自治体は、全部で9都道府県です。
北から順に、以下のとおりになります。
- ・北海道
- ・東京都
- ・千葉県
- ・神奈川県
- ・静岡県
- ・愛知県
- ・大阪府
- ・和歌山県
- ・長崎県
IR推進法では、はじめて開業するカジノは、最大で3箇所と決められています。
運営実績を見ながら、将来的にはほかの地域にもIRが整備される可能性はありますが、まずは上記で取り上げた9つの自治体の中から、最大で3つの地域が選ばれることになるのです。
また、この3箇所については、地域を分散する方針であることもわかっています。
たとえば東京都、千葉県、神奈川県はいずれも関東地方ですから、この3地域の中から2箇所以上が選ばれることはないと考えられます。
首都圏、関西、そのほかの地方の中から、1箇所ずつ選定されると考えるのが妥当でしょう。
北海道、千葉県、静岡県は誘致を断念する構え
上記で取り上げた9つの都道府県のうち、北海道、千葉県、静岡県の3道県に関しては、誘致を断念する方針をすでに表明しています。
したがって2020年6月時点で候補地として残っているのは、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、和歌山県、長崎県の6都府県ということになります。
北海道では新千歳空港に近い苫小牧市を中心に誘致活動を行っており、道内の経済団体もIR誘致推進を希望していましたが、住民からの反対を理由に、鈴木直道知事が誘致を断念。
同じく千葉県でも、有力な候補地だった「幕張新都心」を含む千葉市が、住民の反対を理由に誘致を断念しています。
静岡県では、牧之原市がIR誘致を実現すべく尽力してきましたが、2019年8月にIR誘致を断念したと発表しています。
理由については「県によるIR推進の姿勢が見られなかったから」と話しており、当面の間は、静岡県内にカジノが誕生する可能性はなさそうです。
2020年最新!日本の有力カジノ候補地を一挙紹介
2020年6月時点で、誘致レースに参加している有力カジノ候補地を一挙公開します!
各地域では、どのようなIR事業者がアプローチを行っているのか、統合型リゾート施設としてどんな構想を打ち出しているのかなど、現在までに判明している情報をまとめました。
東京都(台場)
東京都では、石原慎太郎知事の時代から「お台場カジノ構想」を掲げ、全国の自治体を大きくリードする形で、日本におけるIR構想をリードしてきました。
しかし、都知事の度重なる交代、そして当初の予定地の売却といった出来事が重なり、いつの間にか主役の座から離れる結果に陥っています。
現在は「東京ベイエリアビジョン」によってIR誘致の方針を示しており、誘致に向けた動きが本格化する見込みです。
魅力となるのは、なんといっても国内最大、かつアジア最大級の巨大都市であるという点でしょう。
すでに外資系の高級ホテルも多く存在しており、事業者受け入れのノウハウも備わっています。
欠点は、積極的かつ継続的にIR誘致活動を行ってきたそのほかの候補地と比べると、やや出遅れを感じてしまうことでしょうか。
とくに近隣には、これからご紹介する神奈川県横浜市という強力なライバルがいます。
同地域に複数のカジノ設置を行わないという方針が覆らなければ、苦戦を強いられることになりそうです。
神奈川県横浜市(山下ふ頭)
2019年8月、それまで「IR導入については白紙」とする立場を示してきた林文子横浜市長が、「IR誘致を目指す」と正式に表明しました。
具体的な候補地としては、横浜市中心部にある「山下ふ頭」を挙げ、羽田空港からのアクセスのよさなどをメリットとしています。
山下ふ頭から程近いエリアには、観光名所として知られる「みなとみらい地区」があります。
この地区には、世界的リゾートホテルの「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」がすでに営業開始を控えているほか、「フォーシーズンズホテル」の開業も予定されるなど、首都圏の中でもとくにインバウンド需要が高いエリアです。
IR事業者に関しても、ラスベガス・サンズやウィンリゾーツなどが名乗りを上げています。
とくに熱心なのが、香港を拠点とするメルコリゾーツ&エンターテインメント。
横浜市を本拠地にもつJリーグ「横浜F・マリノス」のスポンサーになるなど、横浜市内での知名度を向上させるための取り組みを行っている最中です。
課題として挙げられるのが、住民からの反対が多いことでしょうか。
とくに林市長は、カジノ白紙を公約に掲げて市長選に当選した経歴をもつため、一部の市民からの批判を真っ向から受ける形となりました。
地域で絶対的な権力をもつ、横浜港運協会会長の藤木幸夫氏が反対していることも気がかりです。
愛知県(常滑市・名古屋市)
愛知県内での有力な候補地となっているのが、常滑市です。
常滑市には中部国際空港があり、空港からほぼ直結という立地の利便性が、ほかの候補地を大きくリードしています。
2019年には同市に国際展示場が誕生しており、2つの国際的な施設をもつことも魅力といえるでしょう。
候補地は名古屋市などの中心部からは離れているため、治安悪化を懸念する声も少なく、住民からの反対意見も目立ちません。
常滑商工会議所も誘致に積極的な姿勢を見せているため、誘致に向けて大きなハードルは見当たりません。
難点となるのは、すでに混雑傾向にある空港周辺の交通状況を改善させられるかどうかという点です。
また、名古屋市の河村たかし市長は、名古屋市内への誘致を熱望するなど、県内での意見が未だに割れており、一枚岩になりきれていない印象も感じ取れます。
大阪府・大阪市(夢洲)
大阪府・大阪市は2025年の万博開催とIR誘致の両方を目標にしており、IR推進法が成立する前からカジノ誘致の乗り出すことを表明していました。
すでに大阪万博の開催は確定しているため、目標達成のために、残すところはカジノ誘致の確定のみという情勢です。
大阪では「スマートIRシティ」というテーマを掲げて、カジノ誘致を行っています。
誘致に向けては地域の団体が行政と足並みを揃えているほか、住民からの反対意見も、あまり大きくありません。
むしろ万博開催の決定により、もうひとつの目標であるカジノへの注目度や期待度が高まっています。
誘致が予定されている夢洲は、もともと2008年のオリンピック誘致のために作られた人工島です。
現在は有効活用されているとはいえない状況にありますが、USJから程近く、大阪中心部からのアクセスも良好。
敷地面積は100ヘクタールを超え、ホテルなどの施設も含めたIR誘致に対して、地の利をもっています。
課題としては、大阪万博以前の2024年頃からのカジノ開業を目標にしていることです。
IR汚職や新型コロナウイルスの蔓延により、現在は全国でIRの促進活動がストップしています。
計画が大幅に乱れることにより、カジノ開業に向けた機運が低下する可能性がないとはいい切れません。
また、横浜市が正式に誘致レースに参加することを表明して以降、IR事業者が大阪から離れて横浜での活動に移行した点も気がかりです。
それでも事業者公募には、大手MGMリゾーツとオリックスの合同チームが応募を済ませており、候補地として選定された場合のIR事業者は、事実上すでに決まっています。
和歌山県(マリーナシティ)
和歌山県では、「マリーナシティ」を候補地に据え、2004年から誘致活動を行っています。
近隣には大阪という強力なライバルが存在しますが、和歌山県はこの立地を逆手に取り、近隣都市に2つのカジノが共存することを売りとする方針にシフトしました。
近隣県にはカジノを設置しないという方針が明らかになっている以上、和歌山県が選ばれる場合は、例外的な措置と見なされる可能性が高いでしょう。
また、仮に大阪が落選した場合には、同時に落選となる可能性が生じる戦略であることもネックです。
長崎県(ハウステンボス)
長崎を代表する観光施設である「ハウステンボス」でも、熱心な誘致活動が行われています。
ハウステンボスは、すでに鉄道をはじめとしたインフラが整っているため、初期投資にかける金額を抑えられることがメリット。
「海中カジノ構想」など、独特な戦略を武器にすることでも話題を集めました。
長崎県は韓国や中国から近く、アジア諸国からの観光客を取り込みやすい立地にあることも高く評価されています。
マカオなどの既存カジノと競合する可能性はありますが、日本独自の強みを押し出すことができれば、十分に勝算はあるといえるでしょう。
難点としては、ハウステンボスを起点とした場合に、九州各地へのアクセスが良好とはいえず、IR導入による経済効果を見込みにくい点を挙げなければなりません。
さらに最近では、北九州市も誘致に乗り出す噂が出てきており、九州地方全体で一丸となれているともいえない状況です。
候補地でカジノが開業するのはいつ?

カジノ開業までには、この先に控えている基本方針の策定を経て、候補地の審査を行い、候補地の正式決定を待たなければなりません。
施設建設などの準備期間を加えると、カジノ開業は、2025年頃になる見込みです。
ただし、日本政府による第一弾としてのカジノ誘致は、全国一斉に行われるとは決まっていません。
たとえば2024年開業を目指す大阪では、ほかの地域に先駆けて営業をスタートさせる可能性も、十分に考えられます。
まとめ
2020年6月時点では、カジノ誘致に積極的に乗り出している自治体は、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府・大阪市、和歌山県、長崎県です。
同一地方から複数を選ばないという前提で考えれば、神奈川県・愛知県・大阪府・長崎県は、とくに有力な候補地と考えられます。
今後は基本方針の策定、候補地の決定を経て、自治体による事業者の選定、IR施設の整備という流れで、カジノ開業に向けた動きが進みます。
早ければ2024年には、日本のどこかにカジノが誕生することになるでしょう。