2016年にいわゆる「IR法案」が成立して以降、多くの自治体がカジノを含む「統合型リゾート」誘致に乗り出し、その道のりは順調に見えていました。
しかし、2020年初頭から事態が急転。新型コロナウイルスの蔓延により、暗雲が立ち込めはじめたのです。
神奈川県横浜市では、IR実施方針の表明を延期することを既に発表するなど、新型コロナによる強い影響が懸念されるカジノ誘致計画。
新型コロナ後のIR誘致の動きはどのように変化する可能性があるのか、さまざまな角度から考えていきます。
目次
国内でのカジノ運用スタートは2025年頃の見込みのまま変わらない

当初、2020年の東京オリンピック開催に合わせてカジノ運用をスタートさせる計画が立てられていました。
しかしその予定は大幅な後ろ倒しとなり、現在は2025年頃の運用開始へと照準を合わせています。
この基本的な方針は、新型コロナウイルスが蔓延している現在も変わっていません。
IR誘致を実施する自治体は、2021年1月4日から7月30日までの間に申請を行うよう、現行の規則では定められています。
2020年5月現在、最大で1年2ヶ月の猶予がありますが、状況次第では申請期間の変更、または延長という決定が下される可能性もあるでしょう。
現在のスケジュールでは、正式にカジノの誘致先が決まるのは2022年頃。
この頃までには、新型コロナに対応するワクチンが開発されている確率が高く、経済も元通りに動き始めていると予想できます。
多少、時期のズレが生じる可能性は考えられますが、IR誘致そのものが白紙になることはまず無いでしょう。
横浜市では3月24日にカジノ予算案を可決
IR誘致の有力候補地とされる神奈川県横浜市では、2020年3月24日にカジノ予算案を可決・成立させています。
3月24日と言えば、東京都で新型コロナ感染者が急増しはじめたタイミング。
こういった時期であるにもかかわらず、予算案は正式な手続きを経て成立しています。
コロナ蔓延が現実に起きているなか、横浜市の林文子市長は着々とIR誘致の計画を前進させていたことになります。
こうした動きに一部からは反発の声も上がっていますが、裏を返せば、IR誘致はコロナ後の経済活動を見通す上で、極めて重要な存在であると考えられます。
その一方、横浜市では、2020年6月に予定していた実施方針の公表を8月まで延期することも決定しています。
これについて横浜市では「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、職員の業務に影響が生じ、準備作業に遅れが出る可能性があるため」と説明しました。
実施方針の延期を決定したものの、横浜市では「国への申請期間に間に合うように準備を進める」と話しています。
少なくとも横浜市では、コロナの影響によってIR誘致を中止する、あるいは白紙に戻して見直すといった決断を下す可能性はなさそうです。
カジノ誘致計画に事業者側の事情は影響するのか

新型コロナウイルスによるカジノ業界へのダメージは深刻です。
アメリカのラスベガスでは、3月半ばからIR施設の一時的な閉鎖が始まり、現在はほぼすべての施設が休業状態に。
現在も感染拡大が続いており、先行きの見通しは立たない状況です。
アジア諸国に関しても、アメリカと状況は変わりません。
マカオでは営業そのものは再開していますが、3月末頃からは、海外からマカオへの入国そのものが厳しく制限されることに。
外国人がカジノを利用できない状態に陥ったことで、各施設の収入は著しく落ち込んでいます。
昨年2月と今年2月の売り上げの比較では、なんと87.8%の減収という結果が現れました。
コロナによって失われた金額は日本円にして約420億円。
わずか1ヶ月、しかも閉鎖された期間を考えれば実質約2週間でこれだけの減収なのですから、いかに甚大な被害を受けているかが分かります。
この事実から読み取れるのは、多くのIR事業者にとって、業績悪化に対応し、経営状況を改善させることが直近の課題であるということです。
施設を休業している最中にも、人件費などの維持費はかかり続けており、これがIR事業者の体力を確実に奪い続けています。
IR関連の上場企業の株価も軒並み下落。
世界的に有名な「MGM」や「ウィン」も、その例外ではありません。
倒産などの重大な危機を招く確率は低いものの、今後の運営計画において、少なからず影響が及ぶ可能性は高いでしょう。
甚大な被害を受ける観光業
日本政府や地方自治体も表明している通り、IRはカジノを含むリゾート全般を指す言葉です。
そのため、カジノを持つ世界中の都市が一流ホテルやレストランを誘致することにより、カジノをほとんど楽しまない層も観光客として招き入れることに成功してきました。
例えば、シンガポールにあるマリーナベイ・サンズもその一つ。
このホテルは世界最大のカジノを擁する統合型リゾートですが、多くの人が思い描くイメージと言えば独特の外観や屋上のプールではないでしょうか。
マリーナベイ・サンズはセレブ御用達のホテルとして、世界中の人々から憧れられる存在となっています。
しかし、コロナ蔓延を受けた昨今、観光業には致命的とも言えるダメージが加わり続けています。
特に「Booking」「Entertainment」「Airline」「Casino」「Hotel」の頭文字を取った「BEACH」関連企業は、コロナによる影響を特に強く受ける産業です。
仮に国内での感染が終息したとしても、終息していない海外からの旅行者を招くことは、ホスト国にとって大きなリスクになります。
これらの問題を解決し、人の往来を元通りにするための方法は、ワクチンの完成と普及以外にないでしょう。
それまでの間は、大手IR事業者だとしても、大幅な減収が続くことはほぼ確実です。
事実、現在のように自由に旅行ができない状況が続く以上、我々にとってもカジノに行きたくても行けないという現状は続きます。
旅行者の減少は、IR事業者の体力を蝕み続けていくことになるのです。
IR事業者による日本への投資が後回しになる可能性も
これらの影響により、多額の初期費用がかかる新規投資に対しては、各IR事業者が慎重な姿勢を見せる可能性が大いにあります。
ホテルなどの施設にかける費用や、新しい雇用でかかる費用は多額であり、コロナによる赤字を解消するまでは、日本に対する投資の優先順位は下がるかもしれません。
日本にはカジノ反対派も多く、こういった人々を説得する責任の一端もIR事業者に降り掛かります。
このような事情もIR事業者にとっては負担になることは事実。
日本がIR誘致そのものを撤回することはまずありませんが、一部の事業者が日本進出から撤退する可能性も視野に含む必要があるでしょう。
予定通りに日本進出が決まったとしても、当初予定されていた予算が大幅に削減されることもあり得ます。
どういった形で影響が及ぶのかは未知数ですが、規模の縮小によるゲーム数の減少、ホテルなど施設の簡素化という対応が取られても不思議ではありません。
全事業者撤退という最悪のシナリオは起こり得るのか
多くのカジノファンにとって最悪のシナリオになるのは「全事業者撤退」です。
日本への進出を表明していた企業すべてが撤退すれば、IR整備そのものが成り立たなくなってしまいます。
そのような事態は、果たして起こり得るのでしょうか。
ここまでIR事業者にとって悲観的な内容を羅列してきましたが、現実的に考えれば、全事業者撤退というシナリオはまず起こりません。
日本におけるIR実施は2025年頃であるため、まだ時間的な余裕があり、そこまでに業績を立て直せる見込みのあるIR事業者が多いためです。
一例として大手IR事業者の「ギャラクシー」は、MGMやウィンと比較して株価の大幅な下落が見られません。
その他にも、この苦境を乗り越えられる体力を持つIR事業者が非常に多く、そのすべてが日本から撤退することはまずありえないでしょう。
先ほども指摘した通り、以前の予定よりも規模を縮小した計画を提示するIR事業者が現れる可能性については念頭に置くべきです。
しかし、2025年に予定されているIR整備が完全に立ち消えになるという可能性に関しては、現時点では特に心配する必要はありません。
コロナ終息後の「リベンジ消費」にも期待が集まる

中国では感染拡大が終息に向かい、上海ディズニーランドも一部営業を再開するなど、経済が正常に動き始めました。
これにより、自粛時の鬱憤を晴らすかのような「リベンジ消費」をする人が増えており、同様の動きは今後世界中で見られることになるでしょう。
一部からの批判を集める結果にもなりましたが、日本政府もコロナ後の観光産業復興を視野に「Go Toキャンペーン」事業の予算を組み込んでいます。
外国人旅行客のみならず、日本人がカジノを擁する都市へと旅行する機会も、2025年以降は確実に増えると予測できます。
オンラインカジノへの登録者も増加傾向
コロナ蔓延によって、意外なところへの需要が急増していますが、そのうちの一つがオンラインカジノです。
自由にカジノへ行けなくなった人や、外出自粛を迫られた人が、娯楽を求めてオンラインカジノに登録するケースが相次いでいるのです。
これは、カジノへの潜在的な興味を持った人物が、日本国内にも多くいることを示唆しています。
こういった人々がIR整備後にカジノに興味を示し、現地を訪れる可能性も非常に高いため、コロナ終息後に日本国内でのカジノ熱が冷めることもないでしょう。
オンラインカジノでは、各サイトが新規登録者に向けたキャンペーンを実施しており、お得なボーナスを手に入れた状態でカジノゲームを楽しむことができます。
2025年に向けてオンラインカジノで予行演習し、カジノゲームの基本を学んでおくこともおすすめです。
まとめ
新型コロナウイルスの蔓延に観光産業への影響は大きく、各国のカジノも多大なダメージを受けています。
一方で、倒産の危機にまで追いやられているIR事業者は現時点では見つけられず、全事業者が日本進出から撤退するという最悪のシナリオを想定する必要はないようです。
日本国内においても、政府や自治体が着々とIR整備に向けた準備を進めています。
中国ではいわゆる「リベンジ消費」も生まれはじめており、日本でも同様の現象が起きる可能性は大。
オンラインカジノの新規登録者も増加傾向にあり、カジノ業界の未来は決して暗くありません。
コメントを残す